【令和3年度改定】デイサービスの個別機能訓練加算の変更点を解説!収益への影響や介護事業者の取得状況は?

コラム

令和3年4月に、介護報酬が改定されました。デイサービスの個別機能訓練加算の変更も、そのひとつです。どのような変更がされたのか。デイサービスの管理者であれば、ポイントを押さえておく必要があります。また、介護報酬の改定を機に、新たに個別機能訓練加算の取得を検討している管理者もいるでしょう。ここでは、デイサービスの個別訓練加算の変更を説明するとともに、収益への影響や介護事業者の加算取得状況をお伝えします。

デイサービスの個別機能訓練加算が改定された背景

日本では、2025年に団塊世代のすべてが75歳に、2040年に団塊ジュニア世代がすべて65歳以上になるとともに現役世代の人口が急減すると予想されています。総人口に占める高齢者の割合―高齢化率―が上がれば、医療や介護費用といった社会保障費が増大。そうなると、現役世代にかかる負担が増えてきます。国は、現役世代の人口減少と社会保障費の増大に対応するために、健康寿命延伸に力を入れています。
こうした国の方針を背景に、デイサービスの個別機能訓練加算が変更されました。令和3年度の介護報酬の改定では、利用者の自立支援や重度化防止に役立つ個別機能訓練を提供している事業者に、より多くの報酬が加算される内容になっています。

デイサービスの個別機能訓練加算の変更点

令和3年度の介護報酬改定では、従来の個別機能訓練加算(Ⅰ)・(Ⅱ)が統合されて個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロに変更しています。また、科学的介護情報システム(LIFE)を活用した個別機能訓練加算(Ⅱ)が新設されました。つづいては、「個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロ」と新設の「個別機能訓練加算(Ⅱ)」について、算定要件のポイントを解説します。

個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロ

算定要件 個別機能訓練加算(Ⅰ)イ 個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ
単位数 56日単位/日 85日単位/日
ニーズ把握・情報収集 通所介護・地域密着型通所介護事業所の機能訓練指導員等が、利用者の居宅を訪問し、ニーズを把握するとともに、居宅での生活状況を確認。
金甌訓練指導員の配置 専従1名以上配置 (配置時間の定めなし) 専従1名以上配置 (サービス提供時間帯通じて配置)
※人員欠如減算・定員超過減算を算定している場合は、個別機能訓練加算を算定しない。
※イは運営基準上配置を求めている機能訓練指導員により満たすこととして差し支えない。ロはイに加えて専従で1名以上配置する。
計画作成 居宅訪問で把握したニーズと居宅での生活状況を参考に、多職種共同でアセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成。
機能訓練項目 利用者の心身の状況に応じて、身体機能及び生活機能の向上を目的とする機能訓練項目を柔軟に設定。 訓練項目は複数種類準備し、その選択に当たっては利用者の生活意欲が増進されるよう利用者を援助する。
訓練の対象者 5人程度以下の小集団又は個別
訓練の実施者 機能訓練指導員が直接実施(介護職員等が訓練の補助を行うことは妨げない)
進捗状況の評価 3ヶ月に1回以上実施し、利用者の居宅を訪問した上で、居宅での生活状況を確認するとともに、当該利用者又はその家族に対して個別機能訓練計画の進捗状況等を説明し、必要に応じて個別機能訓練計画の見直し等を行う。

(参照元:厚生労働省|令和3年度介護報酬改定における改定事項について

[算定要件のポイント]

  • 個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロを算定するには、介護事業所の機能訓練指導員等が利用者の居宅を訪問し、日常生活の状況を確認しなければならない。
  • 個別機能訓練加算(Ⅰ)ロを算定するには、専従の機能訓練指導員2名の配置が必要となる。そのうち、1名の機能訓練指導員は、サービス提供時間帯を通じて職務に従事していること。
  • ・専従の機能訓練指導員を1名しか確保できず、個別機能訓練加算(Ⅰ)ロの算定要件を満たせない場合は、その日のみ、個別機能訓練加算(Ⅰ)イを算定することが可能である。
  • 利用者に対する機能訓練は、理学療法士や作業療法士といった機能訓練指導員が直接実施し、5人以下の小グループや個別でおこなうこと。

個別機能訓練加算(Ⅱ)

20単位/月 ※個別機能訓練加算(Ⅰ)に上乗せして算定
<加算(Ⅱ)>加算(Ⅰ)に加えて、個別機能訓練計画等の内容を厚生労働省に提出し、フィードバックを受けていること(LIFEへのデータ提出とフィードバックの活用)

[算定要件のポイント]

  • 個別機能訓練加算(Ⅰ)イまたはロに加えて、科学的介護情報システム(LIFE)への提出情報とフィードバック情報を活用して、個別機能訓練の実施や効果判定・改善をおこなうこと。

個別機能訓練加算を算定した時の売上シミュレーション

変更した個別機能訓練加算を算定すると、売上は、どのように変化するのか。売上をシミュレーションするために、以下に具体例をあげます。

[例:東京都23区(1単位:10.90円)にあるデイサービス、機能訓練指導員は週5日・9:00~17:00勤務、1日あたりの平均利用者数50名]

1日の売上 1ヵ月※の売上
個別機能訓練加算なし 0円 0円
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ算定 30,520円 610,400円
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ算定 46,325円 926,500円
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ+個別機能訓練加算(Ⅱ)算定 41,420円 828,400円
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ+個別機能訓練加算(Ⅱ)算定 52,320円 1,046,400円

(※1 1ヵ月=機能訓練指導員が週5日・4週間勤務した場合)

1日あたりの平均利用者数が50名のデイサービスでは、個別機能訓練加算を算定した場合、1ヵ月で数十~百万円の売上アップが目指せます。機能訓練指導員の人件費を考慮しても、十分に利益をあげることができます。

デイサービスの個別機能訓練加算の取得状況

では、個別機能訓練加算を取得しているデイサービスは、どのくらいあるのでしょうか?令和3年7月に、全国老人福祉施設協議会は、会員登録している4,000箇所の通所介護事業所に対して、加算の算定状況を調査しました。本調査によれば、回答の得られた通所介護事業所1,564箇所のうち、個別機能訓練加算(Ⅰ)イ取得は38.3%(約600事業所)、個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ取得は22.3%(約350事業所)でした。令和8月31日時点、約6割の通所介護事業所では、個別機能訓練加算を取得しており、約4割の事業所では、個別機能訓練加算を取得していない状況となっています。

個別機能訓練加算を取得する利点、問題点

事業所で個別機能訓練加算を取得すべきか、管理者であれば、利点と問題点が気になるところでしょう。利用者の自立支援や重度化防止が目的とはいえ、デメリットが大きければ、今後の運営に支障をきたしかねません。そこで、個別機能訓練加算を取得する利点と問題点を紹介します。

利点

1.事業所の売上がアップする
個別機能訓練加算を新たに取得したり、加算内容を上方修正したりすれば、その分、事業所の売上がアップします。令和元年の「賃金構造基本統計」によれば、理学療法士・作業療法士の平均月収は239,583円となっています。そのため、新たに機能訓練指導員を雇用して個別機能訓練加算を取得する場合でも、人件費を上まわる利益を得ることができるでしょう。

2.介護サービスの質が向上する
機能訓練指導員として認められる資格には、看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師・鍼灸師があります。いずれも、解剖学や運動学といった人体の構造や機能を踏まえながら、運動・動作方法の訓練・指導することを得意とします。デイサービスにおけるリハビリを、専門職に任せたり、アドバイスを受けたりすれば、自立支援や重度化防止に向けた介護サービスが展開しやすいです。

3.介護職の負担が少なくなる
現場の介護職からすれば、専門的な知識・技術を持つ人材に、リハビリの方法を相談したいものです。というのも、介護職の養成課程では、身体・生活機能を向上するためのリハビリ方法について教育を受ける機会が少ないからです。言い換えると、同じ事業所内に機能訓練指導員がいれば、気軽にリハビリの相談ができますし、介護職の心身の負担を少なくすることができます。

4.事業所の売りになる
令和8月31日時点、約4割の通所介護事業所では、個別機能訓練加算を取得していない状況です。機能訓練指導員を雇用し、積極的にリハビリを展開すれば、他のデイサービスとの差別化が図れるでしょう。また、集客に限らず、看護師や介護職などの採用活動をする際も、「リハビリ体制を強化しているデイサービス」として事業所をアピールしやすいでしょう。

問題点

1.機能訓練指導員を確保しなければならない
個別機能訓練加算(Ⅰ)イは1名以上、(Ⅰ)ロは2名以上の機能訓練指導員を確保しなければなりません。個別機能訓練加算の取得を検討する時は、人員配置を整備するための期間やコストがかかることを念頭に置いておくことが必要です。

2.利用者に説明が必要となる
新たに加算を取得したり、取得内容を変更したりするとなれば、利用者の自己負担額が変わってきます。利用者とのトラブルを防ぐには、自己負担額が変更する理由や時期・金額などを丁寧に説明することが大切です。また、事業所の人員配置によっては、営業日ごとに個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロが混在することもあるでしょう。このようなケースでは、トラブルを未然に防ぐために、営業日により人員配置が異なる点も利用者に説明しておく必要があります。

デイサービスで個別機能訓練加算を取得するために必要な手続き

デイサービスにおける個別機能訓練加算の利点・問題点を理解した上で、ここからは、加算取得の手続きを説明します。必要な手続きは、主に4つです。それぞれの項目のポイントをお伝えします。

1.利用者や家族の希望・生活環境・社会参加の状況を把握する
まずは、現時点における利用者や家族の生活状況、今後の生活に対する希望を把握します。利用者の生活状況は、機能訓練指導員等が本人の居宅を訪問し、実際の動作や生活の様子を確認しなければなりません。必要に応じて、医師や歯科医師・ケアマネジャーから健康状態や利用者の意向などを情報収集します。

2.個別機能訓練計画書を作成する
次は、機能訓練指導員等が多職種協働で利用者の目標や訓練項目を設定し、個別機能訓練計画書を作成します。例えば、「歩行器を利用して自宅とスーパーを往復できる」「手すりにつかまりながら玄関の上がりかまちを一人で降りられる」といったように、可能な限り生活に直結した具体的な内容であることが望ましいです。個別機能訓練計画書の作成後は、利用者や家族に説明し、同意を得られたらケアマネジャーに報告します。

3.個別機能訓練を実施する
それから、個別機能訓練を実施します。個別機能訓練は、5人程度以下の小グループまたは個別におこない、機能訓練指導員が直接おこなわなければなりません。補助者であれば、看護師や介護職・生活相談員などのスタッフが訓練に参加することが可能です。個別機能訓練の実施回数は、週1回以上が目安です。また、必要に応じて、利用者の居宅や近隣の施設等に赴いて、実地訓練することが推奨されています。

4.個別機能訓練実施による変化や今後の課題を把握する
最後に、個別機能訓練の効果判定をおこないます。概ね3ヵ月に1回以上、機能訓練指導員等が利用者の居宅を訪問し、効果判定時点での生活状況を把握します。利用者や家族に効果判定の結果を説明後、目標を見直したり、訓練項目を変更したりします。

以上が、個別機能訓練加算の取得に必要な手続きです。なお、手続きに不備があると、個別機能訓練加算が取得できなかったり、介護報酬を返還しなければならない事態になったりしかねません。そのため、個別機能訓練加算の取得を検討している管理者の方は、厚生労働省の通知も確認しましょう。

厚生労働省|リハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の実施に関する 基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について

個別機能訓練加算の取得をサポートする「はやまる」

デイサービスでは、管理者はもちろん、現場のスタッフの書類業務が多いです。個別機能訓練加算を取得したいと思っても、スタッフの手間や不備による返戻のリスクを考えて、加算取得を躊躇している管理者もいるのでしょう。
当社では、デイサービスにおける計画書の作成を支援するソフト「はやまる」を販売しています。「はやまる」は、11種類の計画書作成に対応。個別機能訓練加算の取得に必要な居宅訪問による利用者の生活状況の把握が、タブレットを活用して簡単におこなえます。アプリの質問に沿ってヒアリングをすることで、計画書の約7割を自動作成。業務経験が浅いスタッフも、スムーズな操作が可能です。また、利用者のリハビリ実績を入力すれば、統計データに基づいた訓練メニューに調整することもできます。「はやまる」を活用しているデイサービス様からは、計画書の作成効率や作成ミスが少なくなり、業務負担が減ったという声をいただいています。
個別機能訓練加算の取得に向け、スタッフの業務負担や書類の不備を心配されている方は、この機会に「はやまる」の活用をご検討してみてはいかがでしょうか。当社では、「はやまる」の無料操作体験をおこなっています。ぜひお気軽にお問い合わせください。