「現場で働くスタッフの負担を減らしたい…」
訪問看護事業所の管理者としては、看護師やリハビリ専門職の業務を改善し、スタッフが働きやすい環境をつくりたいもの。業務の負担が減ったり、効率が上がったりすれば、利用者に対するケアをより手厚くすることができます。
近年、訪問看護においても、生産性向上や情報連携などの観点から業務のICT化が推進されています。とはいえ、これまで紙ベースで業務をおこなってきた事業所からすれば、どのように職場のICT化を進めれば良いか悩みますよね。そこで今回は、訪問看護事業所におけるICT普及の実態をお伝えするとともに、現場で役立つICTの種類、活用事例を紹介します。
ICTとは?
ICTは、Information and Communication Technologyの略で、ネットワークを活用して他者と情報を共有する「情報通信技術」のことを指します。代表的なものには、メールやチャット・SNS・インターネット検索・クラウドシステムなどがあります。ICTは、うまく活用すれば、早く正確に情報のやり取りをしたり、業務を進めたりできるのが特徴です。そのため、介護を含むさまざまな分野で普及・導入が求められています。国際的にはIT(Information Technology)と同義語で使われていることもあり、最近では、日本でもITと区別せず、情報通信技術全般をICTと呼ぶようになってきています。
訪問看護事業所におけるICT普及率
近年、介護の人材不足が問題視されるなか、訪問介護分野でも、職員のマンパワーの補填や業務負担軽減を目的にICTの導入が推進されています。訪問看護においても、年々ICTを導入する事業所が増加。令和2年度に全国訪問看護事業協会が訪問看護事業所6,203件を対象におこなった「訪問看護事業所の質の確保に向けた自己評価を支援するための研究事業」の報告書によれば、調査の回答が得られた1,737件の事業所のうち、訪問看護記録書Ⅱの記入方法として手書きが626件(36.0%)、ICT活用が895件(51.5%)、手書きとICT併用が192件(11.1%)でした。
日々の記録や書類の作成・職員間の情報交換などが円滑にできれば、少ないマンパワーでも、効率的に業務を遂行したり、生産性をあげたりすることができます。将来的な介護人材の不足を見据えると、いまから事業所のICT化を準備しておくのも管理者にできる経営戦略と言えるでしょう。
訪問看護の現場で役立つICT
訪問看護で活用できるICTは、主に3種類です。つづいては、各ICTの種類やメリットについて説明します。
①情報伝達・共有アプリ
情報伝達・共有アプリは、職員間のコミュニケーションを支援するツールです。アプリは、チャットや掲示板形式で使用することができます。スマートフォンやタブレットにダウンロードすれば、対面や電話でのコミュニケーションが難しい場面でも職員間で情報伝達・共有が可能。利用者宅への訪問や車・バイクでの移動が多い訪問看護では、よく使われているICTのひとつです。
②訪問看護記録・計画書作成ソフト
日々の記録や計画書といった書類が手書きであると、閲覧や記録・作成の時間・場所が限定され、業務効率が下がってしまうものです。訪問看護記録・計画書作成ソフトは、書類をデータ化することで、書類業務にかかる時間と労力を大幅に削減できる介護ソフトです。タブレットにソフトを導入すれば、記録や作成がタッチ入力可。利用者宅や担当者会議などの出先でも、知りたい情報をすぐに閲覧することができます。なお、最近の訪問看護記録・計画書作成ソフトの多くは、レセプト請求にも対応しているのが特徴です。そのため、ソフトを導入すれば、医療・介護従事者のほか、事務員の業務負担も軽減できます。
③勤怠管理ソフト
職員のシフトを管理するソフトのなかには、訪問看護専用に開発された勤怠管理ソフトがあります。そうした専用ソフトを活用すれば、職員の直行・直帰やテレワーク・時間外勤務などの変形的なスケジュールが管理しやすいです。職員の人数が多かったり、多様な働き方を採用したりして、シフト管理に難渋されている事業所には、おすすめのICTです。
訪問看護事業所におけるICT活用例
では、訪問看護事業所にICTを導入すると、どのような影響があるのでしょうか?ここからは、実際にICTを導入した事例を紹介します。
【A社・訪問看護ステーション・日々の看護記録の効率化を目的に介護ソフトを搭載したタブレットを導入】
訪問看護を展開するA社では、以前まで紙のカルテを使用していたため、看護記録を書くために職員の残業が状態化していました。日中、利用者宅に訪問している看護師は、事業所に戻ってきてからサービス内容をカルテに記録。そのため、業務時間内にすべての利用者の看護記録を書くことが難しくなっていたのです。
そこで、看護記録を効率的に記載できるように、事業所では看護師に介護ソフトを搭載したタブレットを貸与。それにより、停車中の車内などで看護記録を入力。業務時間内に看護記録の記載を完了できるようになりました。また、医師の指示書や服薬といった利用者の情報もタブレットで確認できるようになったため、訪問時の荷物が減り、看護師の移動に伴う負担が減ったと言います。
【B社・訪問看護ステーション・職員間の情報伝達・共有の円滑化を目的にチャットアプリを導入】
B社が運営する訪問看護ステーションは、看護師やリハビリ専門職のほか数多くの事務員が勤務しており、職員間の情報伝達・共有が課題になっていました。伝えたい情報があっても利用者の対応や運転中は電話に出られない、メールでは伝える内容が同じであっても個別にメッセージを送らなければならない…そうした情報伝達・共有の手間が、業務の遂行を遅らせたり負担を増やしたりしている状況だったのです。
B社では、情報伝達・共有をスムーズにおこなうため、各職員のスマートフォンにビジネス用のチャットアプリをダウンロード。アプリを活用したことで、すべての職員に情報をいっせいに伝えられるようになり、「連絡がつかない」ことによる職員のストレスを減らすことができました。
「ICT導入補助金」とは?
タブレットやスマートフォン・介護ソフトをはじめ、事業所にICTを導入するとなれば費用がかかります。経費が無駄にならないようにするには、解決すべき課題を明確にした上で、事業所の業務改善に適したICTを選択するようにしましょう。また、国や地方自治体では、介護現場におけるICTの利用を促進・サポートするために、さまざまな補助金を設けています。「ICT導入補助金」の利用を検討されている管理者の方は、中小企業庁や事業所を管轄する自治体のホームページもチェックしてみましょう。
事務作業をICT化して、利用者さんに手厚いケアを
訪問看護の現場では、利用者のケア以外に事務作業が多いです。日々の記録や報告書・報連相など、事務作業の時間や労力が増えるほど、医療・介護専門職の負担が増すものです。
最近では、訪問看護の現場で役立つさまざまなICTが販売されてきています。ICTをうまく活用し、事務作業の負担を減らせれば、利用者に対するケアをより手厚くできるでしょう。訪問看護事業所の業務改善やサービスの質を向上するために、ICTの導入・活用を検討してみてはいかがでしょうか。
近日リリース!訪問看護現場の事務作業を網羅する「はやまる訪看」
当社では、訪問看護専用のソフト、「はやまる訪看」の販売を予定しています。「はやまる訪看」を活用すれば、看護記録や報告書・計画書の作成などの書類をタブレットやパソコンで作成・共有可。現場で働く看護師やリハビリ専門職の業務効率アップが図れます。
ICT導入をご検討中の管理者様におかれましては、ぜひ「はやまる訪看」のリリース情報もチェックしてみてください。