一口に「食事」と言っても、介護施設では、さまざまな提供方法があります。栄養面やコスト等を考えると、管理者にとって、食事の提供体制づくりは悩みのひとつでしょう。
介護施設で食事を提供するには、行政手続きに加え、事業所にマッチした提供方法を選ぶことが大切です。
そこで今回は、介護施設で食事を提供するために必要な手続きや基準を解説するとともに、食事の提供方法についてお伝えします。
介護施設で食事を提供するために必要なこと
介護施設で食事を提供するには、「届出・許可」「人材」「設備」が必要になります。まずは、それぞれの要件を解説します。
保健所に届出る、保健所の許可をもらう
介護施設に関わらず、食品を提供する場合、営業届出や営業許可の申請が必要です。これは、食品衛生法で、次のように定められているからです。
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食品衛生法 第57条
公衆衛生に与える影響が著しい営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、その営業所の名称及び所在地、その他厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。
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食品衛生法 第55条
公衆衛生に与える影響が著しい営業を営もうとする者は、厚生労働省で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
(参照元 e-Gov|食品衛生法)
介護施設で食事を提供する場合も、自前調理であれば事業所が営業届、委託調理であれば受託事業者が営業許可を都道府県(事業所を管轄する保健所)に申請する必要があります。
ただし、自前調理であっても、1回に提供する食事数が20食未満の介護施設では、営業届の申請が不要です。
食品衛生責任者を設置する
営業届出・許可制度が見直され、令和3年6月から、食品を提供する施設には、食品衛生責任者を設置することが義務づけられました。
食品衛生責任者とは、食品の調理・加工等が衛生的におこなえるように、衛生知識を身につけた職員のことです。以下のいずれかの条件を満たすと、食品衛生責任者になることができます。
①調理師・栄養士等の資格を保持している
②都道県知事が指定した食品衛生責任者を養成するための講習会を受講している
介護施設で食事を提供する場合にも、1名以上の食品衛生責任者の設置が必要になります。
食堂を確保する
食堂は、介護施設の種類ごとに広さが決められています。例えば、デイサービスでは、食堂と機能訓練室の合計面積が、利用者ひとりにつき3㎡以上が必要です。介護老人保健施設では、入所定員ひとり当たり2㎡以上とするように義務づけられています。
食堂を確保する際は、自身が運営する介護施設の種類を見極め、基準以上の広さを確保できるように注意しましょう。
食事を提供する方法
介護施設で食事を提供するには、主に、仕入れから調理までを施設職員が一括しておこなう「自前調理」、調理業務を外部に委託する「委託調理」があります。それぞれ、どのような特徴があるのか?ここからは、食事の提供方法別に特徴を紹介します。
施設職員が食事の仕度をする「自前調理」
自前調理は、調理師が施設内の厨房で食事を仕度する方法です。厨房で調理したものを、時間をおかずに提供できるため、温かいものを温かいうちに冷たいものを冷たいうちに、利用者に召し上がってもらえるのが特徴です。また、調理師とコミュニケーションがとりやすい分、食事形態など、利用者ごとに異なる細かなニーズにも対応しやすいです。
一方で、自前調理となれば、食事メニューを立案する必要があるため、管理栄養士や栄養士が不可欠です。調理師に加え、管理栄養士や栄養士を雇用しなければならないため、自前調理は、人件費がかかりやすい食事の提供方法でもあります。
外部の業者が調理をおこなう「委託調理」
委託調理は、外部の業者に調理を依頼し、配食してもらう方法です。外部の業者が調理するため、自前調理に比べると、食事形態などの細かなニーズに対応しにくいです。
しかしながら、調理師や栄養士を雇用する必要がない分、経営の観点からすれば、人件費を大幅に削減できる方法でもあります。近年では、最新の冷凍技術を活用したり、レストランや料亭で勤務経験のある調理師を雇用したりして、栄養面と味を両立させて委託調理サービスも増えています。
毎日の食事は、利用者の楽しみのひとつ
自宅や介護施設内の生活が中心になっている利用者にとって、食事は、毎日を彩る楽しみのひとつです。最近では、「食事の充実度」を基準に、利用する介護施設を選ぶ方も少なくありません。心地良く施設を利用してもらうためには、栄養面はもちろん、味にもこだわることが大切です。
どのような形で、食事を提供すべきか。利用者のニーズを見極めながら、自身の事業所にマッチした食事の提供方法を選びましょう。
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