【令和3年度改定】ADL維持等加算とは?加算の目的や算定要件を紹介

コラム

ADL維持等加算とは、要介護高齢者の自立支援・重度化防止を目的に、平成30年に新設された介護報酬です。令和3年度の介護報酬改定では加算内容が見直され、対象施設が拡充したり、単位数が大幅に修正されたりしました。
管理者のなかには、新たにADL維持等加算の取得を検討している方もいるでしょう。どのような条件を満たせば加算が算定できるのか?今回は、ADL維持等加算の単位数や対象・算定要件を解説するとともに、算定に必要な手続きについてお伝えします。

ADL維持等加算の単位数・対象・算定要件

はじめに、ADL維持等加算の概要を理解するために単位数や対象・算定要件を紹介します。

単位数

・ADL維持等加算(Ⅰ) 30単位/月
・ADL維持等加算(Ⅱ) 60単位/月
※(Ⅰ)と(Ⅱ)は、併算定不可

ADL維持等加算には、(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があります。令和3年度の改定で、ADL維持等加算(Ⅰ)が3単位/月から30単位/月に、ADL維持等加算(Ⅱ)が6単位/月から60単位/月に変更となりました。
なお、令和4年度までの経過措置として、令和3年度改定時点においてADL維持等加算を算定していた事業所で、改訂後の加算の届け出をおこなっていない場合は、ADL維持等加算(Ⅲ)が算定可能です。この場合の単位数は、3単位/月です。

対象

通所介護、認知症対応型通所介護、介護老人福祉施設、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

令和3年度の介護報酬改定では、通所介護(認知症デイサービス)に加え、認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・介護付き有料ル腎ホーム)が対象なり、ADL維持等加算の対象が拡充しています。

算定要件

<ADL維持等加算(Ⅰ)>
イ 利用者(当該事業所の評価対象利用期間が6月を超える者)の総数が10人以上であること
ロ 利用者全員について、利用開始月と、当該月の翌月から起算して6月目(6月目にサービスの利用がない場合はサービスの利用があった最終月)において、Barthel Index(BI)を適切に評価できる者※1がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省にLIFEを用いて提出していること
ハ 利用開始月の翌月から起算して6月目の月に測定したADL値から利用開始月に測定したADL値を控除して得た値に、初月のADL値や要介護認定の状況等に応じて一定の値※2(下記、ADL利得算出表の右欄)を加えてADL利得の上位及び下位それぞれ1割の者を除く評価対象利用者のADL利得を平均して得た値が、1以上であること

<ADL維持等加算(Ⅱ)>
・加算(Ⅰ)のイとロの要件を満たすこと
・評価対象利用者のADL利得を平均して得た値が(加算(Ⅰ)のハと同様に算出した値)が2以上であること

(参照元 厚生労働省|令和3年度介護報酬改定の主な事項について)
※1 BIの研修を受講している者やBIの測定方法を学習している者など。
※2 ADL利得算出表

1. 2以外の者 ADL値が0以上25以下  1 
ADL値が30以上50以下  1 
ADL値が55以上75以下  2 
ADL値が80以上100以下  3 
2. 評価対象利用開始月において、初回の要介護認定(法第
27条第1項に規定する要介護認定をいう。)があった月か
ら起算して12月以内である者
ADL値が0以上25以下  0 
ADL値が30以上50以下  0 
ADL値が55以上75以下  1 
ADL値が80以上100以下  2 

例えば、初回の要介護認定を10ヶ月前に受け、現在デイサービスを利用しているAさんがいたとしましょう。Aさんの評価開始月のBIは60/100点、評価開始7ヶ月目(利用開始月の翌月から起算して6月目)のBIは70/100点です。この場合、ADL利得は次のようになります。

70点-60点+1点=11点(ADL利得)

ADL維持等加算の対象となっている施設で、利用者総数が10人以上、上位・下位1割を除いたADL利得の平均値が1を上まわれば、ADL維持等加算(Ⅰ)の算定が可能です。さらに、ADL利得の平均値が2を上まわれば、ADL維持等加算(Ⅱ)の算定ができるようになります。

ADL維持等加算を取得する手続き

新規でADL維持等加算を取得するには、ADL維持等加算を算定使用とする月の前月15日までに、都道府県・市町村に「ADL維持等加算に係る届出書」を提出する必要があります。都道府県・市町村が本届出書を確認し、算定要件を満たしていると認められると、ADL維持等加算を算定することができるようになります。
ADL維持等加算の取得ができるようになると、都道府県・市町村から加算対象施設であることが居宅介護支援事業所や住民に周知されるため、生活支援に力を入れている介護施設として外部にアピールすることにもつながります。

ADLの維持・向上に重点を置いた手厚いケアを

利用者が充実した生活を送るには、現状の生活能力をできる限り維持・向上することが大切です。自分でできることが少なくなれば、介護量が増えるほか、自立心や自尊心を失ってしまうことにも繋がりません。言い換えれば、ADLの維持・向上に貢献できれば、利用者やご家族から良い介護施設として評価を受けることができるでしょう。
ADL支援に力を入れる介護施設を目指すなら、ADL維持等加算の取得を検討してみてはいかがでしょうか。