栄養マネジメント強化加算とは?算定要件やLIFE提出項目を紹介

コラム

近年、介護施設において栄養ケア・マネジメントが重要視されています。令和3年度の介護報酬改定では、栄養マネジメント加算や低栄養リスク改善加算が廃止され、「栄養マネジメント強化加算」が新設されました。利用者に対する栄養ケアに力を入れる介護施設では、栄養マネジメント強化加算の取得を検討している管理者もいるでしょう。
そこで今回は、栄養マネジメント強化加算の目的や算定要件を解説するとともに、LIFE(科学的介護情報システム)への提出項目についてお伝えします。

栄養マネジメント強化加算とは?

「栄養マネジメント強化加算」とは、介護施設における栄養ケア・マネジメントの強化を目的に、令和3年度に新設された介護報酬です。対象サービスは、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院です。
従来、施設系サービスにおける栄養関連加算には、「栄養マネジメント加算」や「低栄養リスク改善加算」がありました。栄養マネジメント加算とは、入所者ごとに栄養ケア計画を作成し、栄養管理をおこなうことを目的とした介護報酬です。低栄養リスク改善加算とは、低栄養状態の入所者に対し食事の調整をおこない、栄養状態の改善を図るための介護報酬です。いずれの介護報酬も、令和3年度の介護報酬改定で基本サービスに包括、または廃止されました。
今後の施設サービスでは、栄養ケア・マネジメント強化加算を主軸に、入所者に対する重点的な栄養管理・改善が求められます。


栄養マネジメント強化加算の単位数・算定要件

栄養マネジメント強化加算が新設され、単位数や算定要件はどのように変更されたのでしょうか?つづいては、栄養マネジメント強化加算の単位数や算定要件を紹介します。

単位数

栄養マネジメント強化加算 11単位/日

従来の栄養マネジメント加算は14単位/日でしたが、栄養マネジメント強化加算は11単位/日に単位数が変更されました。なお、施設サービスにおいて入所者に対する栄養ケア・マネジメントが未実施の場合、14単位/日の減算となります(3年の経過措置期間)。

算定要件

・管理栄養士を常勤換算方式で入所者の数を50(施設に常勤栄養士を1人以上配置し、給食管理をおこなっている場合は70)で除して得た数以上配置すること
・低栄養状態のリスクが高い入所者に対し、医師、管理栄養士、看護師などが共同して作成した、栄養ケア計画に従い、食事の観察(ミールラウンド)を週3回以上おこない、入所者ごとの栄養状態、嗜好などを踏まえた食事の調整などを実施すること
・低栄養状態のリスクが低い入所者にも、食事の際に変化を把握し、問題がある場合は、早期に対応すること
・入所者ごとの栄養状態などの情報を厚生労働省に提出し、継続的な栄養管理の実施にあたって、当該情報その他継続的な栄養管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。

(参照元 全国老人保健施設協会|施設系サービスにおける栄養ケア・マネジメントの充実)

栄養マネジメント強化加算を算定するためには、入所者50名に対し、管理栄養士1名以上の配置が必要です。この場合の管理栄養士には、栄養士や調理業務委託先の管理栄養士を含めることはできません。なお、「入所者の数」とは、施設の定員数ではなく前年度の平均入所者数を指します。
例えば、入所定員100名の特養で前年度の入所者平均が95名であった場合、管理栄養士の必要人数は次のようになります。

・95名(前年度の入所者平均)÷50=1.9名(管理栄養士が2名必要)

また、入所者ごとの栄養状態や栄養管理の実施については、LIFEを用いて厚生労働省への情報提出が必要です。

LIFEへの提出項目

栄養マネジメント強化加算を算定するために必要な情報提出は、「①経口維持加算を算定する場合」と「②経口維持加算を算定しない場合」に分かれます。
まず、①経口維持加算を算定する場合は、次の項目について情報提出が必要です。

実施日
プロセス スクリーニング、アセスメント、モニタリング
低栄養状態のリスクレベル 低、中、高
低栄養状態のリスク(状況) 身長、体重、体重減少率、血清アルブミン値など
食生活状況など 主食・主菜・副菜の摂取量、摂取・提供・必要栄養量、本人の意欲、食欲・食事の満足感など
多職種による栄養ケアの課題 姿勢、集中力、口腔状態、むせ込み、食物残渣、褥瘡など

次に、②経口維持加算を算定する場合は、上記に加えて以下の項目についても情報提出が必要になります。

摂食・嚥下の課題 摂食・嚥下機能検査の結果・実施日、摂食・嚥下課題の原因
食事の観察 参加者
食事の形態・介助方法・環境変更の必要性有無など
多職種会議



栄養マネジメント強化のLIFE提出項目に関しては、全国老人福祉協議会がホームページに様式例を掲載しています。どのような項目が必要になるのか。詳細を知りたい方は、様式例も確認しましょう。

介護施設における低栄養リスク者の割合

平成27年に日本健康・栄養システム学会がまとめた『「高齢者保健福祉施策の推進に寄与する調査研究事業」施設入所・退所者の経口維持のための栄養管理・口腔管理体制の整備とあり方に関する研究』では、特別養護老人ホーム(22施設)の入所者1021名、老人保健施設(13施設)の入所者625名を対象に低栄養状態のリスクレベルを調査しました。本調査によれば、特養では低栄養状態のリスクが中・高レベルの入所者が577名(56.6%)、老健では325名(52%)となっています。





調査結果を踏まえると、施設形態に関わらず低栄養状態、またはそのリスクのある入所者は一定数いると予想されます。

栄養ケア・マネジメントを見直し栄養状態の改善を

心身の健康を維持するには、たんぱく質や炭水化物といった栄養が不可欠です。栄養状態が悪いと、生活に必要なエネルギーが不足することに加え、褥瘡などのトラブルを起こすリスクも高まります。そうしたトラブルを防ぐためにも、入所者ごとに栄養状態をしっかりとチェックし、必要があれば早期に適切な対処ができる栄養ケア・マネジメントの体制を築くことが大切です。