科学的介護とは?従来の介護との違いや期待されること

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近年、介護現場においても、科学的根拠に基づいたサービスの提供が求められています。科学的介護とは、従来の介護とどのような違いがあるのでしょうか?「科学的介護推進体制加算」や「科学的介護システム(LIFE)」など、体制の変化を肌で感じているものの、いまひとつその意味や目的の理解に当惑している方もいるでしょう。そこで今回は、科学的介護の意味や目的を説明するとともに、従来の介護との違いや科学的介護に期待されることについてお伝えします。

科学的介護とは?

科学的介護とは、要介護者の重度化防止・自立支援を目的に、科学的根拠(エビデンス)に基づいて提供されるケアのことです。
医療現場では、患者に関する具体的・客観的なデータなどを収集し、治療の効果検証をした上でそれを基にした医療サービスが提供されています。そのほうが、治療者による治療効果のばらつきが少なかったり期待通りの結果を出せたりするなど、効果的な治療ができるからです。
医療現場に比べると、介護現場では、介護従事者の経験や感覚を頼りにケアがおこなわれがちで、科学的根拠に基づいたサービスが十分に実践されているとはいえない状況が散見されます。そうした状況を鑑みて、介護現場でもさまざまなデータを収集したりケアの方法・効果を検証したりして、利用者に対してより効果的な介護サービスを提供しようという動きから科学的介護が推進されるようになったのです。


従来の介護との違い

従来の介護は、介護従事者の経験や感覚を頼りにケアがおこなわれる傾向にありました。例えば、低栄養状態の利用者に対する食事量や栄養量、利用者の日常生活動作(ADL)の改善率、利用者のADLの実施状況など。このような介護は、介護職員の経験や感覚により方法の是非の判断や効果判定がされがちです。これでは、介護職員のスキルにより、利用者のケアに大きな差が生じてしまうでしょう。一人ひとりの利用者が効果的なケアを受けるためには、介護職員や事業所が科学的根拠に基づいた介護サービスを提供できることが大切です。

新たに運用が開始された「科学的介護推進体制加算」と「科学的介護情報システム(LIFE)」

2021年度の介護報酬改定では、「科学的介護推進体制加算」が新設されました。これにより、科学的介護情報システム(LIFE)へのデータ提出とフィードバック活用などを通じた科学的介護の取り組みの強化が期待されています。つづいては、「科学的介護推進体制加算」と「LIFE」について紹介します。

科学的介護推進体制加算

科学的介護推進体制加算は、科学的介護の取り組みを推進するために新設された介護報酬です。対象サービスは、施設系サービス(介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院)と通所系・居住系・多機能系サービス(通所介護、通所リハビリテーション、認知症対応型通所介護、地域密着型通所介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護)です。
科学的介護推進体制加算の単位数や算定要件は、次のようになります。

【単位数】
・科学的介護推進体制加算(Ⅰ) 40単位/月
・科学的介護推進体制加算(Ⅱ) 60単位/月※1
(※介護老人福祉施設、地域密着型介護老人施設入所者生活介護は50単位/月)

【算定要件】
・利用者ごとのADL値、口腔機能、栄養状態、認知症の状況、その他の利用者の心身状況等に係る基本的な情報※2を厚生労働省に提出していること。
(※2 科学的介護推進体制加算(Ⅱ)は、上記に加えて疾病の状況や服薬等の情報を厚生労働省に提出すること)
・必要に応じてサービス計画を見直すなど、介護サービスの提供にあたって上記の情報、その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること。

(参照元 厚生労働省|「科学的介護情報システム(LIFE)の活用等について」)

科学的介護情報システム(LIFE)

LIFEは、Long-term care Information system For Evidence(科学的介護情報システム)の略で、介護事業所がデータベースに情報を入力することでそれを厚生労働省が分析・フィードバックする仕組みです。LIFEにデータが収集されることで、各介護事業所は、自身の介護施設でおこなっているサービスの内容を改善したり、効果を検証したりできるようになります。

エビデンスに基づいた効果的な介護サービスを

2022年5月現在、LIFEに利用者情報が集積し、徐々にフィードバックが始まっています。客観的なデータを活用できれば、利用者に対して適切なケアが提供しやすくなります。また、客観的なデータを活用したほうが、利用者やご家族に対しても状態変化やケアの効果などを説明しやすいものです。介護職員の経験や感覚に加えて、データベース等もうまく活用していきながら、エビデンスに基づいた効果的な介護サービスをおこなっていきましょう。