令和3年度の介護報酬改定で、「科学的介護推進体制加算」が新設されました。医療と同じように、介護にも科学的根拠に基づいたサービスの提供が求められています。
福祉医療機構の調査によれば、デイサービス(通所介護・認知症対応型通所介護)における加算の取得状況は、57.9%となっています(令和3年11月時点)。新年度に向け、科学的介護情報システム(以下LIFE)の利用や加算取得を検討している管理者もいるでしょう。
そこで今回は、デイサービスの管理者向けに科学的介護推進体制加算の算定方法を紹介します。
科学的介護推進体制加算とは?
科学的介護推進体制加算は、要介護高齢者の自立支援・重度化防止を目的とした、科学的に裏付けられたサービスを推進するための加算です。LIFEを活用して取得する加算であることから、「LIFE加算」とも呼ばれます。
各介護事業所はLIFEに利用者の情報を入力し、そのデータを厚生労働省が収集・分析。その後、結果が介護事業所にフードバックされます。LIFEのフィードバックを活用することで、介護現場におけるサービスの効果検証や内容改善が期待されています。
デイサービスにおける科学的介護推進体制加算の単位数・算定要件
科学的介護推進体制加算は、介護施設の種類により単位数や算定要件が異なります。デイサービス(通所系・多機能系・居住系サービス)における科学的介護推進体制加算の単位数・算定要件は、以下の通りです。
【単位数】
科学的介護推進体制加算 40単位/月【算定要件】
イ 利用者ごとの心身の状況等の基本的な情報を、厚生労働省に提出していること。
ロ サービスの提供に当たって、イに規定する情報その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること。
(参照元 社会保障審議会介護給付分科会|令和3年度介護報酬改定の主な事項について)
なお、算定要件の「利用者ごとの心身の状況等の基本的な情報」とは、厚生労働省が作成した『科学的介護推進に関する評価(通所・居住サービス)』に記載された内容のことです。具体的には、利用者のADLや口腔・栄養状態、認知症の有無などの項目があります。項目の詳細は、以下のリンクから確認できます。
厚生労働省|科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について
科学的介護推進体制加算を算定する流れ
科学的介護推進体制加算を算定するには、「①LIFEの利用申請」「②利用者・ケアマネジャーへの説明・案内」「③管轄する自治体への届出」「④利用者の評価」が必要です。
- LIFEの利用申請
まずは、専用ページで、LIFEの利用申請(新規登録)をします。利用申請をおこなうと、厚生労働省からLIFEの利用開始に必要な情報が記載されたハガキが届きます。ハガキ到着後から、LIFEの利用・操作が可能となります。 - 利用者・ケアマネジャーへの説明・案内
科学的介護推進体制加算を算定するとなれば、デイサービスの重要事項説明書に「科学的介護推進体制加算」の記載が追加されます。そのため、LIFEの利用を開始したら、実際に加算を算定する前に利用者・ケアマネジャーへの説明・案内をしておきましょう。 - 管轄する自治体への届出
自治体(市区町村等)への届出は、原則、科学的介護推進体制加算の算定を開始する前月の15日までが提出期限となっています。 - 利用者の評価
科学的介護推進体制加算の算定を開始する月に利用者を評価し、翌月の10日までに評価結果をLIFEに入力します。その後は、少なくとも6ヵ月に1回以上評価をおこない、LIFEの情報を更新していきます。
LIFEの課題と今後の方針
LIFEを利用すると、厚生労働省のフィードバックに基づき、事業所におけるサービスの効果検証や内容改善をすることができます。ただし、現状では、厚生労働省のフィードバックは全国的な集計値をまとめるに留まり、事業所・利用者単位のサービス改善に役立てにくいのが現状です。
一方で、厚生労働省によると、今後は事業所・利用者単位のフィードバックをおこない、個別的にサービスの質が向上できるようにLIFEの運用を改善する方針が示されています。
【LIFEにより収集・蓄積したデータの活用】
- LIFEにより収集・蓄積したデータは、フィードバック情報としての活用に加えて、施策の効果や課題等の把握、見直しのための分析にも活用される。
- LIFEにデータが蓄積し、分析が進むことにより、エビデンスに基づいた質の高い介護の実施につながる。
- 現在、全国集計値のみをフィードバックしているが、データの集積に伴い、今後事業所単位、利用者単位のフィードバックを順次行う予定である。
(参照元 厚生労働省|全国厚生労働関係部局長会議資料)
科学的根拠に基づく効率的な介護サービスを
介護現場では、各職員の経験も大切です。ベテラン職員の「勘」を頼りに、適切なサービスが提供できることもあるでしょう。
しかしながら、すべての職員が同じようにサービスの質を担保できるわけではありません。また、将来的な介護人材不足を見据えると、より効率的な介護サービスの運用が求められます。
「科学的介護推進体制加算」の取得を足掛かりに、デイサービスにおけるより良い運用・サービス提供を目指してみてはいかがでしょうか。