介護職員が少ないと、デイサービスの管理者としては運営に苦労するものです。慢性的な人手不足が続けばサービスの質が低下しますし、一人ひとりの介護職員に大きな負担がかかります。
弊社も例外ではありませんでした。せっかく採用した介護職員が次々と早期退職してしまい、人材定着が社内の課題になっていました。そこで、社内体制や採用活動を根本から修正したところ、現場の人手不足を改善することができたのです。
ここでは、介護現場が人手不足に陥る原因を解説するとともに、人手不足を改善できた弊社の取り組みを紹介します。
介護現場における人手不足の現状
介護業界では、施設形態に関わらず人手不足が問題となっています。介護労働安定センターが実施した「介護労働実態調査(令和3年度)」によれば、介護事業所全体における人材の過不足状況は、「大いに不足」が8.5%、「不足」が21.5%、「やや不足」が33.0%でした。
人材の過不足 | 割合 |
---|---|
大いに不足 | 8.5% |
不足 | 21.5% |
適当 | 36.6% |
過剰 | 0.4% |
(参照元 介護労働安定センター|令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について)
このように、約6割の介護事業所が現場の人手不足を感じています。
人手不足になる主な原因
介護現場が人手不足になる原因は、大きく2つです。ひとつは「人材の採用が困難である」こと、もうひとつは「早期離職率が高い」ことです。
①採用が困難である
介護労働安定センターの「介護労働実態調査(令和2年度)」では、実に86.6%の介護事業所が人手不足の原因として「採用が困難である」と回答しています。
また、同調査をさかのぼり採用率の経年変化をみてみると、介護人材の採用率は、減少傾向にあることがわかります。
(参照元 介護労働安定センター|介護労働の現状について および 平成26年度「介護労働実態調査」の結果)
※介護人材:平成26年度調査分までは訪問介護員・介護職員、平成27年度調査分からは訪問介護員・介護職員・サービス提供者責任者を指す。
※採用率:応募者に対して何人を採用したのか、割合で示したもの。
良い人材が見つからなかったり、そもそも応募がなかったりして人材が確保できないければ、人手不足の状況に陥ってしまうのです。
②早期離職率が高い
ここ数年、介護労働者の離職率は減少傾向にあります。令和3年度の離職率は14.3%で、ピーク時である平成19年の21.6%からすれば、約7%減少しています。
一方で、離職者の内訳をみてみると、勤続3年未満の離職者が全体の約6割を占めている状況です。
(参照元 介護労働安定センター|令和3年度 介護労働の現状について)
勤続年数が3年以上になると、その後も比較的長く事業所で働いてくれる介護労働者が多いです。言い換えれば、人材定着がうまくいかず早期離職者が増えると、「人が足りない」という状態になってしまうのです。
介護現場の人手不足を解消するには?
介護現場の人手不足を解消するには、自事業所における「採用活動」と「人材定着」という2つの視点からのアプローチが必要です。
採用活動に力を入れ、応募者がたくさん集まっても職員として働きにくかったり、成長できなかったりすれば早期離職につながってしまいます。一方で、現場の働きやすさを改善するなど、職員に長く働いてもらえるような体制だけを整備しても、採用活動に力を入れなければそもそも人が集まらないでしょう。
【実例】人手不足の改善に成功した弊社の具体的な取り組み
では、介護人材を確保するためには、どのように「採用活動」や「人材定着」の体制を整備していけば良いのでしょうか?ここからは、デイサービスをはじめ、さまざまな介護保険サービスを展開する事業者として、弊社が人手不足の改善に成功した具体的な取り組みを紹介します。
自社の魅力を発信するブランディングの強化
はじめに取り掛かったのは、自社の企業ブランドを構築することです。
数あるデイサービスのなかで、就職先として選んでもらうには、自社の考えや魅力を積極的に発信する必要があります。「ここを見学してみよう」「ここで働きたい」と求職者に思ってもらうには、他のデイサービスとの差別化が重要になるのです。
弊社では、ビジョンやロゴマークなどを一新することで、自社が目指すべき姿を社内外に明示しました。例えば、ビジョンである“不自由な世界を変える”には、「私たちの存在や成長が、誰かの不自由をなくしていく」という意味が込められています。
また、自社の魅力を発信するために採用サイトも作りました。
昨今は、年代に関わらず、ほとんどの応募者がインターネットで下調べしてから求人に応募する傾向があります。弊社では、採用サイトに代表メッセージや行動指針(バリュー)・現役社員のインタビューなどを集約しました。それにより、自社の考えや魅力を知ることに加え、求職者が「自分の働く姿」をイメージできるようにしています。」
ミスマッチを防ぐ採用手法の見直し
弊社では、採用のミスマッチを防ぐために採用活動の方法を見直しました。
まず、採用面では、独自の評価シートを導入。社内におけるハイパフォーマーの行動特性に基づき求職者を評価することで、より自社にマッチした良い人材を採用できるようにしました。
一連の採用プロセスの中でもっとも重要視するようになったのは、「ビジョンへの共感」です。自社と同じほうを向いて努力できる人材を採用基準として優先することで、入社後の早期離職率を下げることができました。
また、採用面接と入社の間に「現場体験」できる機会を設けたのも、見直した点のひとつです。求職者に現場の雰囲気や仕事を納得した上で入社してもらう。そうすることで、入社前後の理想と現実のギャップが縮められ、採用のミスマッチを防ぐことができたのです。
社内言語・情報を共有し、社員の共通認識を促進
人は忘れてしまう生き物です。だからこそ、同じほうを向いて働き続けるには、入社後も自社の考えを伝え続けていくことが大切です。
弊社では、社内言語・情報を共有し、社員一人ひとりが共通認識を持って働けるように体制をつくりました。
例えば、以前は、「目の前の方々のために」というのをスローガンのひとつにサービスを提供していました。しかしながら、これでは、何をすべきかが明らかになっておらず、社員によって受け取りが違ったり、行動が変わったりしていました。そこで、「目の前の方々の『やりたい』を叶えるために」をスローガンにしたところ、社員一人ひとりが目の前の利用者さんのために考えて行動できるようになったのです。
また、社内で動画を作成し、社員向けに会社の方針やこれから取り組んでいくことなどをテーマに情報発信しています。代表者や役員の考え・動向を伝えていくからこそ、社員が一丸となって働ける土壌が作れると考えています。
社員のモチベーションを高める研修と認定制度の確立
人材定着の取り組みとしては、研修やキャリアアップ体制にも力を入れています。
まず、新たに入社した社員には、「スタートアップ研修」を実施しています。これは、介護職員として実務を教育する意味もありますが。上長やエリアマネージャーなどとのコミュニケーション機会をたくさん設け、仕事に関する悩みを共有するのが目的です。そうすることで、社員の不安を払拭しながら職場に定着してもらっています
それから段位制度を設け、社員のキャリアアップを支援しています。弊社の工夫点としては、段位を細分化し、社員が次のステップに向けてモチベーションを高めやすくしていることです。自分の目標や達成度合いが明確になったほうが、自分の成長を感じながら働きやすいでしょう。
積極的なICT導入で、働きやすさと業務効率の向上
仕事の満足度を高めるには、日々の働きやすさも大切です。弊社では、積極的にICTを導入し、現場の業務効率をアップしています。
デイサービスには、書類づくりから請求業務までたくさんの事務作業があります。こうした事務作業は、利用者さんへのサービス提供時間を圧迫しますし、残業時間が増える大きな要因にもなっています。
そこで、弊社のデイサービスでは、介護ソフトや健康管理アプリ等を導入し、事務作業をできる限りデジタル化しました。ルーチンワークが楽にできることはもちろんですが、利用者さんに対するサービス提供時間がしっかり確保できると、職員の喜びにもつながり仕事の満足度が高まっているように感じます。
現場の働きやすさを改善するためのICT活用として以下の業務をシステムに置き換えました。
- 計画書作成
- 記録入力
- 送迎業務
- 連絡帳、介護日誌作成
これらの業務をシステム化することによって121時間/月の業務削減につながりました。これは6人分の月残業時間に値する数値になります。上記のシステムはお問い合わせいただければ、オンラインでのデモ実演や無料トライアルに対応させていただいております。介護現場の業務改善をお考えであれば、ぜひ、この機会に「はやまる」の利用をご検討されてみてはいかがでしょうか。