デイサービスのキャンセル対策|稼働率をアップするためには?

お役立ち情報

体調不良や病院受診など、デイサービスにはキャンセルが付きものです。対人サービスなので突然のキャンセルが発生するのは仕方ありませんが、件数が増えるほど稼働率が下がってしまいます。管理者としては、キャンセルがあっても可能な限り売上を維持したいものです。
そこで今回は、キャンセルに悩むデイサービス管理者向けに、キャンセル対策の方法を紹介します。

キャンセルが多いほど、稼働率が下がる

デイサービスの売上を左右する要因のひとつに「稼働率」があります。稼働率とは、利用できる最大人数に対する実際の利用割合のことです。
1日の稼働率は、「1日の利用者数÷1日の利用定員数」で計算します。例えば、1日の利用定員数が30名のデイサービスであれば、実際の利用者数が1日あたり20名であった場合、1日の稼働率は20÷30=約67%です。
また、1ヵ月単位で稼働率を算出する場合、計算式は「1ヵ月の延べ利用者数÷(1ヵ月の営業日数×1日あたりの利用定員数)」となります。例えば、1日の利用定員数が30名のデイサービスで、1ヵ月の営業日数が25日、1ヵ月の延べ利用者数が500名であった場合、その月の稼働率は500÷(25×30)=約67%です。
このように、稼働率は実際の利用者数により割合が変わってきます。1日の利用者数が減る、つまり、キャンセルが多いほど稼働率が下がり、売上もダウンしてしまうのです。

「キャンセル料」がとりにくい介護業界

突然のキャンセルとなると、利用者から「キャンセル料」を請求するのもひとつです。通所介護契約書に記載し、事前に説明していれば、利用者に対しキャンセル料を請求することができます。
しかしながら、デイサービスでは、キャンセル料を請求しないケースが多いです。宿泊や交通などの一般的なサービスと違い、利用者や家族とは長い付き合いになりますし、お互いの信頼関係を大事にしているからです。キャンセル料を請求すれば利用予定日分の損失を補填することはできたとしても、利用者や家族との関係性が崩れてしまうとも限りません。
そのため、デイサービスのキャンセル対策は、キャンセル料を請求する以外の方法を検討するのが良いでしょう。

デイサービスでできるキャンセル対策とは?

デイサービスでは、どのようなキャンセル対策をすべきか?ここからは、具体的なキャンセル対策を紹介します。

振替利用を促す

ひとつは、キャンセルした分の振替利用を利用者に促すことです。デイサービスでは、1日の利用定員数を超えない日であれば、その日に振替利用してもらうことが可能です。利用者からキャンセルの希望があった時には、空き状況を確認した上で振替利用を勧めましょう。
また、振替利用は、利用者にとってもメリットがあります。
デイサービスを休むとは、利用者からするとその分の活動量が減ってしまう可能性があるということです。1回休んだからといってすぐに生活機能が低下するとは考えにくいですが、何度も続いてしまうと、生活機能の維持・改善が難しくなるでしょう。振替利用は、利用者の活動量の確保や生活機能の維持・改善するためにも効果的です。

頻繁にキャンセルされる利用者の情報を整理する

頻繁にキャンセルされる利用者に対しては、キャンセルした日時・曜日・理由などの情報を整理することも大切です。というのも、「キャンセル」と一口に言ってもさまざまあり、ケースによって対応を変える必要もあるからです。
例えば、通院日に重なって毎月決まったサイクルでキャンセルされる方には、デイサービスの利用日変更を相談するのが良いでしょう。また、利用者がデイサービスの利用日を忘れてしまいやすいのであれば、利用日の確認や前日の電話連絡などが必要になるでしょう。
このように、利用者ごとにキャンセルした日時・曜日・理由などを整理すると、一人ひとりの事情に合わせたキャンセル対策が立てられるようになります。

積極的なキャンセル対策で稼働率を維持・向上する

WAM(福祉医療機構)が調査・分析した「通所介護の経営状況について(令和 3 年度)」によれば、収益に関する指標である利用率(稼働率)は、黒字事業所が平均74.2%であったのに対し、赤字事業所は64.9%でした。経営を安定させていくためには、まずは1日あたりの利用者数を増やしていくことが大切です。積極的にキャンセル対策をし、稼働率の維持・向上を目指しましょう。

(参照元 WAM(福祉医療機構)|通所介護の経営状況について(令和 3 年度)

ケアの質向上と現場の働きやすさのために

デイサービス業界では、利用者の自立支援・重度化防止を目指した質の高いサービス提供とともに、人材の確保・生産性の向上といった課題が山積しています。事業者には、利用者にも介護従事者にも選ばれるより良い環境づくりが求められています。
しかしながら、デイサービスの業務は、日々の記録から利用者へのケア・送迎など業務量が多く、煩雑です。また、3年ごとに介護保険制度が改定されるため、それに合わせて体制を変えていく必要もあります。利用者やスタッフのために環境を整えたくても、課題が多く悩まれている方も多いのではないでしょうか。
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プロフィール

田口 昇平

作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級/取材ライター

作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や介護施設などに勤務。

2018年よりフリーライターに転身。医療介護従事者への取材をしながら、現場の業務改善や労働環境づくりなど幅広いテーマで執筆。