利用者の自立支援を促進するための個別機能訓練加算。令和3年度の介護報酬改定では、個別機能訓練加算(Ⅰ)に加え(Ⅱ)が新設されましたが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか?事業者としては、ふたつの違いを理解し、加算を漏れなく算定していきたいものです。
ここでは、個別機能訓練加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の違いを説明するとともに、同時算定の注意点についてお伝えします。
個別機能訓練加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の違い
個別機能訓練加算(Ⅰ)は、身体機能や生活機能の維持・向上を目的に、利用者に対する個別的な評価、訓練計画の作成・実施を行った場合に算定できる加算です。個別機能訓練加算(Ⅱ)は、(Ⅰ)に加えてLIFE(科学的介護情報システム)に情報提供し、かつフィードバックを活用することで、科学的裏付けに基づく機能訓練を提供できることを目的としています。
令和3年度の介護報酬改定では、従来の個別機能訓練加算(Ⅰ)・(Ⅱ)が統合されて個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロに変更し、あらたにLIFE活用を算定要件に含めた個別機能訓練加算(Ⅱ)が新設されました。
個別機能訓練加算(Ⅰ)の算定要件
(Ⅰ)イ | (Ⅰ)ロ | |
単位数 | 56単位/日 | 85単位/日 |
ニーズ把握・情報収集 | 通所介護・地域密着型通所介護事業所の機能訓練指導員等が、利用者の居宅を訪問し、ニーズを把握するとともに、居宅での生活状況を確認。 | |
機能訓練指導員の配置 | 専従1名以上配置 (配置時間の定めなし) | 専従1名以上配置 (サービス提供時間帯通じて配置) |
※人員基準欠如減算・定員超過減算を算定している場合は、個別機能訓練加算を算定しない。
※(Ⅰ)イは運営基準上配置を求めている機能訓練指導員により満たすこととして差し支えない。 ※(Ⅰ)ロは、(Ⅰ)イに加えて専従で機能訓練指導員を1名以上配置する。 |
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計画作成 | 居宅訪問で把握したニーズと居宅での生活状況を参考に、多職種共同でアセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成。 | |
機能訓練項目 | 利用者の心身の状況に応じて、身体機能及び生活機能の向上を目的とする機能訓練項目を柔軟に設定。 訓練項目は複数種類準備し、その選択に当たっては利用者の生活意欲が増進されるよう利用者を援助する。 | |
訓練の対象者 | 5人程度以下の小集団又は個別 | |
訓練の実施者 | 機能訓練指導員が直接実施(介護職員等が訓練の補助を行うことは妨げない) | |
進捗状況の評価 | 3ヶ月に1回以上実施し、利用者の居宅を訪問した上で、居宅での生活状況を確認するとともに、当該利用者又はその家族に対して個別機能訓練計画の進捗状況等を説明し、必要に応じて個別機能訓練計画の見直し等を行う。 |
個別機能訓練加算(Ⅱ)の算定要件
単位数 | 20単位/月 ※個別機能訓練加算(Ⅰ)に上乗せして算定 |
算定要件 | 加算(Ⅰ)に加えて、個別機能訓練計画等の内容を厚生労働省に提出し、フィードバックを受けていること(LIFEへのデータ提出とフィードバックの活用) |
併算定する際に注意すること
個別機能訓練加算(Ⅰ)・(Ⅱ)は、併算定することが可能です。全国老人福祉協議会が行った調査では、デイサービスにおける個別機能訓練加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の算定状況は以下のようになっています。
個別機能訓練加算(Ⅰ) | |
全体 | 60.6% |
加算Ⅰ イ | 38.3% |
加算Ⅰ ロ | 22.3% |
(参照元 全国老人福祉施設協議会|令和3年7月 加算算定状況調査結果 通所介護 (完全版))
個別機能訓練加算(Ⅱ) |
27.9% |
(参照元 全国老人福祉施設協議会|令和4年4月 加算算定状況調査結果 通所介護 (完全版))
併算定すると、サービスの充実に加え売上アップにもつながりますが注意もあります。
まず、個別機能訓練加算(Ⅰ)を算定するには機能訓練指導員がイで1名、ロで2名必要ですが、最低限の人員配置であると、職員の休みがあった場合に算定要件を満たせない可能性があります。職員の休む可能性や休みやすさを考えると、余裕を持った人材配置が大切です。
また、個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定するにはLIFEの利用申請が必要です。利用登録や設定などに時間がかかりますし、事業所内で運用方法を共有しなければならないので、こちらも余裕を持ってスケジュールを組むようにしましょう。
サービス体制を強化し、積極的な自立支援・重度化防止を
機能訓練・リハビリの専門職を配置したり、配置を強化したりすれば、利用者の自立支援・重度化防止をさらに促しやすくなるものです。また、介護サービスの提供には職員の経験や勘ももちろん大切ですが、科学的裏付けに基づいた情報を活用することで、より効果的なサービスを提供できるでしょう。
ケアの質向上と現場の働きやすさのために
デイサービス業界では、利用者の自立支援・重度化防止を目指した質の高いサービス提供とともに、人材の確保・生産性の向上といった課題が山積しています。事業者には、利用者にも介護従事者にも選ばれるより良い環境づくりが求められています。
しかしながら、デイサービスの業務は、日々の記録から利用者へのケア・送迎など業務量が多く、煩雑です。また、3年ごとに介護保険制度が改定されるため、それに合わせて体制を変えていく必要もあります。利用者やスタッフのために環境を整えたくても、課題が多く悩まれている方も多いのではないでしょうか。
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プロフィール
田口 昇平 作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級/取材ライター 作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や介護施設などに勤務。 2018年よりフリーライターに転身。医療介護従事者への取材をしながら、現場の業務改善や労働環境づくりなど幅広いテーマで執筆。 |