2023年12月最新 【令和6年度介護報酬改定】通所介護関連の改定についてまとめ①

お役立ち情報

令和6年度に次回介護報酬改定が予定されています。介護給付費分科会では各介護サービスの現状や課題が議論されており、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の事業者も改定に向けた準備が必要です。
社会保障審議会介護給付費分科会(以下、介護給付費分科会)は「令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」を示すとともに、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護に関して改定の方向性を整理しています。
ここでは、次回介護報酬改定の基本的な視点・方向性について要点をお伝えします。

「令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」が示される

令和51011日に開催された介護給付費分科会では、「令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」が示されました。これは、次期改定に向けた介護報酬全体の考えを整理したものです。まずは、今後の介護報酬がどのような考えに基づいて改定されるのか、基本的な視点を見ていきましょう。

 

地域包括ケアシステムの深化・推進

まずは、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の深化・推進です。増加する認知症者・単身高齢者、介護に加え医療ニーズの高い中重度の要介護高齢者を含め、誰もが住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、地域特性に合わせた柔軟かつ効率的な取組を推進することが求められています。

自立支援・重度化防止に向けた対応

次に、高齢者の「自立支援・重度化防止」に向けた質の高い介護サービスの提供です。令和3年度介護報酬改定でも言及されたリハビリ・機能訓練-口腔管理-栄養管理の一体的取組、同改定で導入された科学的介護情報システム(LIFE)を活用した質の高い介護サービス提供の必要性が強調されています。

良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり

それから、良質な介護サービスの提供に向けた介護人材の確保と働きやすい職場づくりです。介護の人材不足が問題視される中、ICT・介護ロボット等のテクノロジーや介護助手の活用等による業務負担軽減・生産性向上・処遇改善の重要性が指摘されています。また、複数の法人間で協力関係を構築する等、経営の協働化といった経営方法も必要性が示唆されています。

制度の安定性・持続可能性の確保

最後に、介護保険制度の安定性・持続可能性を確保することです。介護保険料・公費・利用者負担で支えられている介護保険制度の運用を継続していくために、評価の適正化・重点化、介護報酬体系の整理・簡素化を推進する必要性が示されています。

以上が、令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な考え方です。
令和3年度と同じように、基本的には「地域社会で包括的に高齢者等の暮らしを支えていくこと」「積極的に自立支援・重度化防止を図っていくこと」「働きやすい職場をつくりサービスの質を維持・向上すること」「介護保険制度や介護サービスを適切に運用すること」が重要視されています。

通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の課題・論点と対応案

 

ここまで、令和6年度介護報酬改定について基本的な視点をお伝えしました。それでは、通所系サービスでは、どのような改定が検討されているのでしょうか?介護給付費分科会は、通所系サービス事業者に向け「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護|改定の方向性(令和51026日)」を示しています。つづいては、現時点で議論されている通所系サービスの課題・論点・対応案を紹介します。

 

入浴介助加算の見直しについて

入浴介助加算は、令和3年度介護報酬改定で「入浴介助加算(Ⅱ)」が新設され、通所型施設や自宅における利用者の入浴自立に向けた支援体制が強化されました。
入浴介助加算(Ⅰ)の算定率は、事業所ベースで通所介護91.4%、地域密着型通所介護73.9%、認知症対応型通所介護94.9%です。入浴介助加算(Ⅰ)に関しては、算定率が高いこともあり、より適切なサービスが行えるよう、入浴介助に必要な技術を研修に組み込む等して、算定要件を見直しすることが示唆されています。
一方で、日本デイサービス協会は、「入浴介助加算Ⅰ算定に関する厚労省案に対する声明(令和5年10月27日)おいて、人員不足に陥っている通所型施設が多い中で、入浴介助の研修を実施する難しさを訴えています。z

研修実施有無を含め、入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件がどのように見直されるか、今後の動向を注視することが必要です。
また、入浴介助加算(Ⅱ)は、利用者宅で入浴状況を評価する専門職(医師や理学療法士等)の確保・連携が難しいこと、個浴をはじめ利用者宅に近い入浴環境の整備が難しいことといった理由から、算定率が事業所ベースで通所介護12.2%、地域密着型通所介護7.5%、認知症対応型通所介護9と低くなっています。入浴介助加算(Ⅱ)については、利用者宅に介護職員が訪問し、専門職の指示のもとICT機器を活用して状況確認を行うことで、算定可能とすることが検討されています。
ただし、「入浴」はそもそも求められる動きが複雑で、専門職でも介助に難渋することが多い動作です。そのため、専門職の直接的な介入有無に関わらず、管理者としては現場スタッフの介助スキルや業務負担を考えながら算定を検討することが重要です。

個別機能訓練加算の適正化について

個別機能訓練加算は、令和3年度介護報酬改定において、人員配置基準等の算定要件が見直されました。介護給付費分科会の調査では、個別機能訓練加算(Ⅰ)イの算定率は通所介護43.6%、地域密着型通所介護35.5%、(Ⅰ)ロは通所介護26.8%、地域密着型通所介護12.6%となっています。機能訓練指導員の配置人数がより必要となる(Ⅰ)ロは、イに比べると算定率が著しく低い状況です。
令和6年度介護報酬改定では、機能訓練指導員の配置要件緩和が検討されています。これは、6割程度の事業所で、個別機能訓練実施日1日あたりの平均訓練時間が30未満であるためです。
改正案では、個別機能訓練加算(Ⅰ)ロにおける機能訓練指導員の配置時間の定めなしとされています。事業者からすれば、サービス提供時間帯を通じて機能訓練指導員を配置する必要がなくなるので、午前中のみ機能訓練指導員に勤務してもらう等、柔軟な人員配置が可能となります。
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロの算定を検討している事業者は、機能訓練指導員の配置要件が見直されるか注目したいところです。

通所系サービスにおける3%加算・規模区分特例について

新型コロナウィルス感染症の流行を受け、通所系サービスの利用者減少への対応として、令和3年に①3%加算 ②規模区分の特例が設けられました。
「3%加算」とは、減少月の利用延人数が当該減少月の前年度の1箇月あたりの平均利用延人数から5/100以上減少している場合に、基本報酬の3/100に相当する単位数を加算するというものです。「規模区分の特例」とは、減少月の利用延人員数がより小さい事業所規模別の報酬区分の利用延人数と同等となった場合に、より小さい事業所規模別の報酬区分を適用するというものです(例:大規模Ⅰの利用者が750人以下となった場合、通常規模型が算定可能)。
これらの加算・特例は、今後も新たな感染症・大規模災害の発生を想定し、緊急時に対応できる加算として存続することが検討されています。

豪雪地帯等に対する通所介護等の取扱いの明確化

北海道や東北地方をはじめとする豪雪地帯※1等を対象に、当日の利用者の心身状況(急な体調不良等)に限らず、「積雪等のやむを得ない事情についても、通所介護計画上の所要時間より短い提供時間になった場合に通所計画上の単位数を算定して差し支えない」旨を明確化することが検討されています。

※1豪雪地帯:豪雪地帯対策特別措置法で指定された毎年恒常的に降雪量の多い地域
(参照元 国土交通省|豪雪地帯(特別豪雪地帯)指定地域

 

令和6年度介護報酬改定に向けて

今回は、令和6年度介護報酬に関する基本的な視点と、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の課題・論点・対応案について、介護給付費分科会の資料をもとに解説しました。
現時点では、通所系サービス事業者としては、入浴介助加算や個別機能訓練加算の算定要件見直しについて注目しておくことが大切です。また、豪雪地帯に指定されている地域では、積雪等のやむを得ない事情による利用時間短縮の取り扱いについて、今後の動向に注意しましょう。
本シリーズでは、今後も令和6年度介護報酬改定に関する最新情報をお届けいたします。

ケアの質向上と現場の働きやすさのために

デイサービス業界では、利用者の自立支援・重度化防止を目指した質の高いサービス提供とともに、人材の確保・生産性の向上といった課題が山積しています。事業者には、利用者にも介護従事者にも選ばれるより良い環境づくりが求められています。
しかしながら、デイサービスの業務は、日々の記録から利用者へのケア・送迎など業務量が多く、煩雑です。また、3年ごとに介護保険制度が改定されるため、それに合わせて体制を変えていく必要もあります。利用者やスタッフのために環境を整えたくても、課題が多く悩まれている方も多いのではないでしょうか。
弊社では、デイサービス向けに介護ソフト「はやまる」を提供しています。介護保険請求に加え、日々の記録・計画書作成・連絡帳・送迎管理・勤怠管理・売上予測管理など、デイサービスの業務全般をカバーする機能を搭載しています。「はやまる」を導入することで、デイサービスの業務全般を効率化でき、日々のケアに集中しやすくなるとともに、現場の働きやすさを向上することが可能です。
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プロフィール

田口 昇平

作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級/取材ライター

作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や介護施設などに勤務。

2018年よりフリーライターに転身。医療介護従事者への取材をしながら、現場の業務改善や労働環境づくりなど幅広いテーマで執筆。