【令和6年度改定対応】ADL維持等加算の概要と変更点を紹介

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ADL維持等加算は、利用者の自立支援・重度化防止を図り、ADLを維持・改善する事業者に対し加算される介護報酬です。平成30年に新設。令和3年度の報酬改定では単位数が大幅アップし、令和6年度には算定要件が一部厳格化されました。
要介護高齢者の増加、介護給付費の増大といったさまざまな課題が山積するなか、デイサービスには、日常生活能力の維持・改善に重点を置いた質の高いサービスが求められています。
ここでは、ADL維持等加算の概要と、令和6年度改定における変更点を紹介します。自施設の体制を見直すにあたりご参考ください。

ADL維持等加算とは?

通所介護をはじめ、介護保険事業では、利用者の日常生活に重点を置いたサービスが求められています。生活維持・改善に向けた取り組みに付与されるインセンティブ。そのひとつがADL維持等加算です。
本加算は、利用者の自立支援・重度化防止につながるサービスを提供した事業所に対し、介護報酬を上乗せする加算として、平成30年に新設されました。
全国老人福祉施設協議会の報告によれば、令和4年4月時点のデイサービスにおけるADL維持等加算の算定率は24.7%となっています。令和3年度の介護報酬改定では単位数が大幅アップしたものの、算定率は決して高くありません。その一方で、ADL維持等加算を算定しているほうが、算定していない通所サービスよりもADLを維持できているとの報告もあります(厚生労働省|LIFE の活用状況の把握およびADL 維持等加算の拡充の影響に関する調査研究事業(速報値))。
昨今、ADLのアウトカム評価が重要視されている傾向を踏まえると、経営面からしても積極的に算定していきたい加算です。

ADL維持等加算の単位数・算定要件

デイサービスにおけるADL維持等加算の単位数・算定要件は、以下の通りです。

単位数 ADL維持等加算(30単位/月

ADL維持等加算(60単位/月

※(Ⅰ)と(Ⅱ)は、併算定不可

算定要件 ADL維持等加算(Ⅰ)】

イ 利用者等(当該施設等の評価対象利用期間が6か月を超える者)の総数が10人以上であること。

ロ 利用者等全員について、利用開始月と、当該月の翌月から起算して6か月目(6か月目にサービスの利用がない場合はサービスの利用があった最終月)において、Barthel Indexを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省(LIFE)にデータ提出していること。

ハ 利用開始月の翌月から起算して6か月目の月に測定したADL値から利用開始月に測定したADL値を控除し、初月のADL値や要介護認定の状況等に応じた値(調整係数※1)を加えて得た値(調整済ADL利得)について、利用者等から調整済ADL利得の上位及び下位それぞれ1割の者を除いた者を評価対象利用者等とし、評価対象利用者等の調整済ADL利得を平均して得た値が1以上であること。

 

ADL維持等加算(Ⅱ)】

・ADL維持等加算(Ⅰ)のイとロの要件を満たすこと。

・評価対象利用者等の調整済ADL利得を平均して得た値が3以上であること。

 

<1>ADL値と調整係数

ADL 調整係数
0以上25以下 1
30以上50以下 1
55以上75以下 2
80以上100以下 3

≪例:初回要介護認定を10か月前に受け、デイサービスを利用しているAさん≫
・評価開始月BI:60/100点
・評価開始7か月目(利用開始月の翌月から起算した6か月目)BI:70/100点

この場合、調整済ADL利得は、 ADL値(70点-60点)+調整係数(1点)=11点となります。
なお、実際には、LIFEにデータを入力するとADL利得が自動的に計算されます。そのため、個々の事業所が利用者一人ひとりのADL利得を計算する必要はありません。

Barthel Index(BI)とは?

Barthel Index(BI)は、利用者のADLを評価する指標です。バーサルインデックスまたはバーセルインデックスと呼ばれ、介護やリハビリの現場で広く利用されています。
BIは、食事やトイレ動作など、誰もが日々行う10項目の日常生活動作で構成され、100点満点で利用者のADL能力を評価します。
ADL維持等加算を算定するにはBIの研修受講等が必要です。厚生労働省は、「研修」について、介護関連団体が主催する研修受講や動画マニュアルでの学習を推奨しています。介護の実務経験がある方にとっては難しい評価ではないので、まずは、専用ページで評価方法をチェックしてみることをおすすめします。

(参照元 厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について

令和6年度改定におけるADL維持等加算の変更点

ADL維持等加算は、令和6年度の介護報酬改定にて算定要件が一部変更されました。ご参考までに、令和3年度・令和6年度の算定要件について簡単に比較したものをお示しします。

 

令和3年度報酬改定 令和6年度報酬改定
ADL維持等加算(Ⅱ)が算定可能となるADL利得が「2」以上 ADL維持等加算(Ⅱ)が算定可能となるADL利得が「3」以上
ADL評価を実施するタイミングに応じて調整係数が2パターン存在 ADL評価を実施するタイミングに関わらず調整係数を一本化

今回の介護報酬改定では、ADL維持等加算(Ⅱ)の算定要件が厳格化された一方で、ADL利得を算出するための計算式が簡素化されました。日常生活能力を維持・改善に重点を置いた、活動・参加レベルのサービス提供を促す形の変更と言えるでしょう。

LIFEへのデータ提出

ADL維持等加算を算定するには、LIFEへのデータ提出が必要です。データ提出の頻度は、「評価対象利用開始月に1回」「評価対象利用開始月の翌月から数えて6か月目の翌月10日」の合計2回です。

LIFEへの「入力」は常時可能です。ただし、データ提出がないと加算の算定ができなくなってしまうので、期日までに提出できるよう注意してください。

日常生活能力に重点を置いたサービス提供が求められる

ADL維持等加算を算定すると、各自治体から加算対象施設であることが居宅介護支援事業所や住民に周知されます。そのため、生活支援に積極的な介護施設として、外部にアピールすることも可能です。加算算定による収益アップはもちろん、他施設との差別化を考えて算定するメリットが大きいのではないでしょうか。
また、科学的介護をはじめ、デイサービスにもアウトカム評価が求められています。体力や筋力等を維持・改善するだけでなく、それらを日常生活に活かし、できる限り利用者自身の力で生活できるようサポートすることが求められています。
日常生活能力に重点を置き、より積極的な生活支援に力を入れた体制づくりを目指しているのであれば、ADL維持等加算の算定を検討してみてはいかがでしょうか。

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プロフィール

田口 昇平

作業療法士/福祉住環境コーディネーター2級/取材ライター

作業療法士免許取得後、東京都内のリハビリ専門病院や介護施設などに勤務。

2018年よりフリーライターに転身。医療介護従事者への取材をしながら、現場の業務改善や労働環境づくりなど幅広いテーマで執筆。