近年、業務の効率化や職員の負担軽減を目的に、介護現場でもICT導入が推進されています。管理者のなかには、事業所のICT導入を検討している方もいるでしょう。とはいえ、介護現場におけるICTのメリットや活用方法がわからなければ、導入を躊躇してしまうもの。そこで今回は、介護事業所の管理者に向けてICTの意味を説明するとともに、介護現場における導入のメリットやデメリット・活用事例について、お伝えします。
そもそもICTとは?
ICTは、Information and Communication Technologyの略で、「情報通信技術」を指します。国際的にはIT(Information Technology)と同じ意味で使われ、近年では、日本でも情報通信技術をITではなく、ICTと呼ぶようになってきています。身近なものでは、メールやチャット・インターネット検索・通信販売の利用・SNSの活用などが代表的なICTです。ICTは、導入すればスムーズに情報を共有したり、業務の効率化や従業員の生産性を向上したりすることができるため、さまざまな分野で活用が進んでいます。
介護現場にICT導入が求められる理由
近年では、介護現場でもICTの活用が推奨されています。なぜ、介護現場にICT導入が求められるかというと、その理由は主に2つあります。
1.介護人材の不足を補う
少子高齢化が進む日本では、要介護高齢者の人数が増える一方で介護人材が不足しており、介護現場のマンパワー不足の対応が急務となっています。令和2年度に、介護労働安定センターがおこなった「介護労働実態調査」によれば、調査対象のなかで有効回答が得られた9,244の介護事業所のうち、約6割の事業所で人材不足を感じている状況でした。介護人材が不足していても、ICT導入によりさまざまな機器を活用すれば、現場のマンパワーを補うことができます。
2.データに基づくサービスを提供する
もうひとつは、科学的データに基づく介護サービスを提供するためです。例えば、デイサービス利用者の運動量を記録し、その記録データに基づいた運動プログラムを提供するといったように。ICTを活用すれば、介護職員の勘や経験側に頼らずとも、利用者に合ったプログラムを立案することができるため、介護の実務経験に関わらず、誰もが最適なサービスを利用者に提供できるのです。
厚生労働省がまとめた「令和2年度ICT導入支援事業 導入効果報告」によれば、ICT導入を補助した事業所(医療機関を含む)は2,553箇所であり、補助した機器数の種別と割合は、以下のようになっています。
補助したICT機器種別 | 割合 |
---|---|
介護ソフト | 47.9% |
タブレット端末 | 23.9% |
スマートフォン | 4.1% |
Wi-Fi機器 | 8.7% |
モバイルPC | 2.7% |
インカム | 2.2% |
バッグオフィスソフト | 2.9% |
その他 | 7.7% |
(参照元 厚生労働省|令和2年度ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ)
現在、介護人材が充足している事業所も、今後はマンパワーが減ったり不足したりする可能性も少なくありません。将来的に介護サービスの質を維持・向上していくことを考えれば、ICT導入を前向きに検討するのも経営戦略のひとつと言えるでしょう。
介護現場にICTを導入するメリット・デメリット
「介護現場でICT機器の活用が推進されている」とはいっても、管理者としては、ICT導入が事業所にどのような影響を与えるのか、できるだけ具体的に理解しておきたいものです。つづいては、介護現場にICTを導入するメリット・デメリットを説明します。
メリット
1.情報共有が円滑にできる
情報共有が円滑にできなければ、業務が滞ったり、利用者に不利益を与えたりしてしまうもの。ところが、介護現場では、伝達事項があるのに、話したい職員の所在がわからず申し送りに時間がかかったり、正確に情報が伝えられなかったりするというのは、よく起こりがちな問題です。このような場合は、スマートフォンやインカム(トランシーバー)といった通信機器を活用すれば、職員の所在を問わず、効率的に情報共有ができます。
2.書類業務の負担が減る
介護分野では、利用者向けの説明資料や行政に提出する文書など、書類業務が多いです。「月初や月末は、書類作成で残業するのが恒例になっている」施設があるとも聞きます。書類業務の時間が長くなれば、利用者のケアに費やせる時間や職員のプライベートの時間が削らざるを得なくなるでしょう。しかしながら、最近では、書類作成が簡単にできる介護ソフトやタブレット端末が販売されています。そうしたICT機器を活用すれば、入力を定型化したり、チェックボックス式にしたりなどできるので、書類作成にかかる時間を削減することができます。
3.介護サービスの質が向上する
職員間の情報共有や書類業務にかかる時間を短縮できれば、介護職員としては、現場のサービスに費やせる時間を増やすことができます。一人ひとりの利用者に対するケアを手厚くしたり、レクリエーションやイベント活動の準備をしたり。あるいは、インシデントや事故に気づきやすくなるでしょう。介護サービスの質が向上すれば、介護職員の心理的負担の軽減ややりがいにもつながります。
デメリット
ICTに不慣れな職員もいる
中高年層の職員のほか、前職がICT機器を使わない職種であるなど。介護職員のなかには、パソコンやタブレット・スマートフォンといったICTに不慣れな方が少なくありません。そのため、管理職としては、不慣れな職員がいることを前提に、ICT導入前後には使い方の研修を開いたり、相談窓口をつくったりしておくことも大切です。
2.機器の導入に費用がかかる
ICT機器を導入するとなれば、当然、それに応じた費用がかかります。どのような業務改善が期待できるのか、ICT導入前には、費用に見合った業務パフォーマンスが得られるように、導入の目的を明確にしておきましょう。また、国や地方自治体では、ICT導入のための補助金の交付制度を設けています。ICT導入に伴い、補助金の交付申請を検討する場合は、中小企業庁や事業所を管轄する都道府県・市区町村のホームページをチェックしてみましょう。
介護現場におけるICTの活用事例
実際に、介護現場では、どのようにICTが活用されているのでしょうか?ここからは、ICTの活用事例を2つ紹介します。
【A社・訪問介護事業所・サービス提供責任者と訪問ヘルパーの情報共有改善を目的に、業務用チャットを導入】
訪問介護事業を展開するA社では、以前からサービス提供責任者(以下、サ責)と訪問ヘルパーの情報共有に課題がありました。業務の都合で外出していることも多いサ責。必要な情報交換を早く正確にできない現状に、訪問ヘルパーやサ責自身がストレスを感じていたのです。そこで、各職員が所持するスマートフォンに業務用チャットを導入し、メッセージで情報共有しやすい体制を整えました。業務用チャット導入にあたり、スマートフォンを所持していない職員には事業所のスマートフォンを貸与、スマートフォンを所持している職員には通信費を補助。これにより、サ責と訪問ヘルパーが情報共有しやすくなり、訪問介護の状況をサ責が詳細に認識できたり、サービス担当者会議で意見交換がしやすくなったりし、「サ責と連絡がとれない」という訪問ヘルパーのストレスも減りました。
【B社・デイサービス・介護職員の書類業務負担の軽減を目的に介護ソフトとタブレット端末を導入】
B社が運営するデイサービスには、ルーチンワークとしてさまざまな書類業務があります。なかでも、現場の介護職員の負担となっていたのが、介護記録や連絡帳といった日々の記録です。というのも、すべての記録を手書きでおこなっていたため、利用者ひとりあたりに費やす記録時間が長くなっていたからです。そこでB社では、デイサービスに介護ソフトとタブレット端末を導入し、職員がタッチ操作で介護記録や連絡帳を記録できるようにしました。導入当初は、タッチ操作に時間がかかる職員もいましたが。徐々に操作方法に慣れていくとともに、記録の時間が短くなったり、隙間時間に記録できるようになったり、結果的には以前よりも効率良く記録が可能に。空き時間ができたことにより、おやつ作りや計画書の作成などにしっかりと時間を使えるようになりました。
ICT導入により、業務の負担軽減と効率化を
一口に「ICT」と言っても、さまざまな種類がありますが、共通しているのは、機器を導入すれば現場の業務の負担軽減と効率化を図れるということです。まずは、事業所の問題点や課題を見極めた上で、それらをICTで解決できないか検討してみることが必要です。介護現場の業務が円滑になれば、職員のストレスを減らしたり、モチベーションを上げたりもできるでしょう。
はやまるのこと
当社では、介護現場に活用できるICTとして、計画書作成支援システム「はやまる」を販売しております。「はやまる」は、デイサービスで必要となる通所介護計画書や介護予防通所介護計画書・個別機能訓練計画書といった、11種類の計画書作成を支援するサービスです。タブレットアプリの質問に沿ってヒアリングをおこなえば、計画書の約7割を自動作成。また、運動量などのデータを蓄積すれば、利用者ごとに最適なプログラムを提案する機能も付いています。お問い合わせいただければ、オンラインでのデモ実演や無料トライアルに対応させていただいております。介護現場の業務改善をお考えであれば、ぜひ、この機会に「はやまる」の利用をご検討されてみてはいかがでしょうか。
はやまる|【お客様の声】計画書の作業効率があがり、業務が楽になりました!